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本編
ああ、とんだ失敗だ!
ボトルには名前が書いてあるわけ
でもないし、俺の所有品だと
証明できるものがない。
勢いに任せて部屋に飛び込んだまでは
良かったが、それだけに、
いったん返答しようが無くなると、
態勢不利を立て直せなかった。
ヨシノ「何をくだらん言いがかりを!
社長。これは私が、綿密に
商品リサーチをし、
海外に良い健康食品があるとの
情報を得たものです。
証拠もなく騒ぐような、これといった
業績も上げていない社員の戯わ言、
どうかお聞き流しください」
どさくさ紛れに、しれっとマウントを
かましつつ、自分の方が信用度が
高いとアピールするヨシノだった。
コノヤロー!またしても頭に
血が上ったが、残念ながら、
今の俺には劣勢をひっくり返せる
ものが何もない。
社長が眉間にしわをよせた。
社長「君、立場をわきまえなさい。
呼んでもいないのに、勝手に
会議室に入って来るとは何事だ。
席に戻って、自分の仕事をしなさい」
俺の話を聞いてくれそうな雰囲気は、
かけらもなかった。
確かに、社長にとっては、
かたや社長賞、かたや地味な
一営業担当。どちらが信じるに
値するかは、考えるまでもない。
完全に俺の勇み足だ。せめて
証拠になりそうな、発注の記録を
持ってくるべきだった。
今更気づいたが、もう遅い。
ヨシノ「これから、社長と
大事な打ち合わせをするんだ。
おまえはお呼びでないんだよ。
さっさとフロアに戻れ」
ヨシノが顎をしゃくり、
偉そうに退室を促して来た。
頭にきたが、やっぱり返す言葉は
無く、俺は仕方なく会議室を出た。
わざとらしく、ばたんと
音をたててドアを閉められた。
あああ、ほんとに腹立たしい!
すっかりブルーな気分に浸り、
退社した。思い出すとイライラ
してしまう。何か、あいつに
一矢報いる方法はないだろうか。
あれこれ考えながら帰宅し、
とりあえずはホームページに
アクセスし、マイページを呼び出した
あのトマトジュースを
愛飲するようになって、3ヶ月だ。
月一の発注で、履歴は辿れる。
使える機会があるかどうかは別問題
として、印刷だけでもしておくか。
がっくりしながら
プリント作業をしていたら、
またマユから連絡があった。
今日もうちに来るという。
俺としては、へこんでいる
自分を見せたくない。明日に
出直してくれないかなと思った。
でもどう言えばいいだろう。