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本編

ナオト

「うーん、また合わない」

 

スカ太郎

「またかよ?

先月も合わなかったんだろう?」

 

俺はスカ太郎。健康をメインにしている

中堅食品会社に勤務する27歳だ。

いま、同僚で総務課のナオトが、

渋い顔で書類を見ているのところに

通りがかり、事情を聞いているところだ。

ナオトによると、ここ半年間、

会社の備品やら試供品やらの

在庫管理で頭を悩ませているという。

数量が合わないのだそうだ。

俺が所属する営業課にも、

備品についての注意書きが、

回覧で回って来ている。

ちりも積もれば何とやらだ。

トイレットペーパーが

5ロール足りないとか、

一回一回は大した量ではないけれど、

それでも半年続けばなかなかの

損害になる。

 

ボールペンだの、修正液だの、事務用品は

あらかた被害に遭っているらしい。

中でも、試供品が足りなくなる

というのは、会社にとっては

笑いごとでは済まされない話だ。

うちは食品会社で、独自開発の

健康食品やサプリメント、

海外商品など、各種を

幅広く取り揃えている。

試供品は、自分達で用意出来る物なら

まだしも、取引先に頼んでいる場合もある

紛失しちゃったので、

もう一回くださいとは、

会社の信用問題に関わるから、

とても言えない。

 

スカ太郎

「誰が持って行ってるのか、

見当はついてるのか?」

 

ナオト

「薄々は。でも証拠がないのでな。

おまえさんにも言えないよ」

 

スカ太郎

「それもそうだな。まぁ、

うちの課でも注意はしておくから」

 

ナオト

「頼むよ。取引先から

提供してもらった試供品が

1ダースも無いとか、

もうシャレにならん」

 

総務課も大変だな。

俺は、頭を抱えている同僚のそばを、

そっと離れた。

うちは、元々はどこにでもある

加工食品を扱う会社だった。

5年くらい前かな。

長く続いている健康ブームに、

これは定番化の流れだと考えた経営陣が、

今からでも乗ると決断したという。

手始めに、卸し部門を創設。

更に研究部門も作り、健康系のサプリを

開発し、ヒット商品までこぎつけた。

サプリはめでたくシリーズ化され、

最近はお茶にまつわる飲料の開発が

急がれている。

 

そんな会社で営業マンを

やっているせいか、俺も健康には

気を遣っているほうだ。

個人的なブームは、

海外商品のトマトジュース。