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本編

母のことはずっと気に掛かっていた

ものの、仕事と生活に追われながら、

1人で懸命に生きた。

そんなある日のこと…私はふと

思い立ち、何年も仕舞い込んでいた

絵本を引っ張り出してみた。

古ぼけた絵本の、くっつきかけた

ページをパリパリと開いていくと、

懐かしい思い出が蘇ってきた。

微笑みながら読み進め、

最後のページをめくった時、

そこに一枚の絵葉書が

挟まっていたのだった…

 

(あれ…?この絵葉書って…)

 

まだ本当の母と暮らしていた頃、

母に届いた絵葉書の、

美しい海外の風景に魅せられた私が、

母におねだりをして、

もらったものだった。

 

(こんな所に挟んだままだったんだ…

すっかり忘れてた…)

 

それはどうやら、母の友人が

新婚旅行先から送ったものらしく、

楽しげなメッセージと共に、差出人で

ある母の友人・山口さんの住所氏名

と、電話番号が記されていた。

 

(もしかしたら!!何か、お母さんの

話を聞けるかもしれない…!!)

 

こんな近くに、手がかりがずっと

眠っていたなんて…どうしてもっと

早く気付かなかったのか…

私はドキドキしながら、

書かれていた電話番号に

電話をかけてみることにした。

 

(だけど…もう他の人の電話番号に

なってしまっている可能性も

あるよね…)

 

もしそうでもガッカリしないよう、

心を落ち着けながら数回のコールを

待っていると、

「はい。山口です」と、

絵葉書に書かれていたのと同じ名字を

告げる女性の声が聞こえた。

慌てて相手のフルネームを

確認すると、「そうですけど…」と

訝しがるような返事が返ってきた。

 

(お母さんの居場所が分かるかも!)

 

突然降って湧いた希望に、

私はすっかり舞い上がってしまった。

私はまず自分の名を名乗り、

それから母の名前と、古い絵葉書を

見つけて電話をかけたこと、

母は私が子供の頃にいなくなった

まま、消息が分からないこと、

母の情報を知っていたら、

何でもいいから教えて欲しい

ということを、一気にまくし立てた。