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本編
スカオ「え!?いや…これは…
こんなのは受け取れません!
犯行はあの2人が勝手にしたことで、
あなたはご存知なかった訳ですし!」
ご老人「ですが、あなた様には
ご迷惑をおかけした上、
実害も有ったと聞いております。
これはケジメですので、
どうぞお納め下さい」
スカオ「いやいやいや!
受け取れませんよ!」
俺は、こんな分厚い札束、
見たことないし、今後も二度と
お目にかかれないだろうな…
などと思いつつも、
欲しいという気持ちは、
少しも湧いてこなかった。
もしこのお金を受け取って
しまったら、ノブタカとアヤカの
やったことを許すみたいで…
嫌だった。
ここはついこの前まで
祖父が暮らしていた、
思い出いっぱいの家なのだ。
ノブタカとアヤカの自分勝手で
安易な考えで、この家を穢された
ことを絶対に許すつもりはないし、
今だって、すぐそこの仏壇から、
祖父がこのやり取りを見ているに
違いないのだ。
もしも欲に負けて、
このお金を受け取ってしまったら、
あの優しくも厳しかった祖父に、
叱られるに違いない。
しばらく押し問答を続けた後、
俺が本当に受け取るつもりが
無いのだという事を、
ご老人も分かってくれたようで、
どうにか封筒を収めてもらえた時、
俺は心の底からホッとしたのだった…
それから、ご老人は、
「ノブタカとアヤカには、
しかるべき処置をする」
と約束をして帰って行った。
『しかるべき処置』という
言葉の恐ろしい響きに、
2人の悲惨な末路を想像しつつ、
(まぁ、命まで取られる事は
無いだろうけど…え?無いよな??
少なくとも、ノブタカとアヤカは、
刑務所から出てきたところで、
地元周辺に居場所は無いだろうし、
もう二度と会うことも無いだろう…)
警察のもみ消しを知った後には、
世の中がイヤになって、
やる気が起きなかった俺も、
ご老人に会った後は、
やる気や生きる気力が湧いてきて、
また仕事を頑張れるようになった。
会社で、全ての顛末を話して
聞かせると、「封筒を受け取れば
よかったのに!」とか、
「いらないなら俺にくれよ!」などと
散々もったいながられたものの、
最後にはみんな、「よくやった」
と褒めてくれたのだった…
それ以降、社内では
『社員を30連勤させると、休みの神様が
お怒りになって、家を乗っ取られてしまう』
という、何とも奇妙で理不尽な伝説が
誕生したのだった…
とは言え、通常は土日は必ず休めるし、
残業も少ない平和な職場なので、
その心配は無用な気もするが…
まぁ、また何が有るか分からないので、
今後は休みの神様を怒らせないよう、
しっかり休む事にしようと、社員一同、
冗談半分、本気半分で心に誓ったのだった…
おわり