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本編
すっと困り顔で、香水女に
言い負かされていた眼鏡の女性が、
初めて強い目をして言い返す姿に、
私は(いいぞ!その調子!)と
思わずにいられなかった。
駅員「ですが…さっき聞き取りした
時には、あなたを含めた全員が、
あなたが右側、男性が左側に
立っていたと証言してるんですよ?
それを今さら……」
香水女「ちょっと!!みんな
どうかしちゃったんじゃないの!?
とにかく!!私はコイツの左に
立ってて、コイツは左手で
私のお尻に触りましたっ!!」
スカオ「でしたら、さっきあなたが
スマホで撮った写真、もう一度
見せて下さいよ。私の手が
右手だったか左手だったか、
ハッキリ写っているはずですよ?」
香水女「えっ……なんで見せなきゃ
なんないのよ!私のスマホよ?
もう見せたくないわ!!」
駅員「え?さっきは自分から
見せてたのに、どうして今は
見せられないのですか?」
香水女「そ、そんなの私の
勝手でしょっ!!見せたくない
ものは見せたくないのっ!!」
その場の全員が、香水女の
往生際の悪さに呆れていた。
スカオ「つまりあなたは主張を
変えて、私が左手であなたを
触ったと、そう仰るんですね?」
香水女「だからそうだって言ってる
でしょ!!私はチカンされたショック
で、記憶違いをしてただけ!!
あなたが私のお尻を
鷲掴みにしたのは、絶対に
間違いない事実なんだから!!
私、あなたが私のお尻に触ってるとこ
この目でちゃ〜んと確認したん
だから!!右手が義手で動かない
なら、左手で触ったって事でしょ!!
そうに決まってるじゃないのっ!!」
スカオ「なるほど…それなら
それでいいですよ。もうそろそろ
警察も来るでしょうから、DNA鑑定と
繊維鑑定をやってもらいましょう。
そうすれば、私が左手であなたを
触っていない事も、ハッキリと
証明されますから」
香水女「鑑定…?」
香水女は何も知らないのか、
目をパチクリさせていた。
スカオ「ご存じないですか?
でしたら教えて差し上げましょう。
最新のDNA鑑定では、衣服に付着した
皮脂や汗に含まれるDNAを
調べることで、チカンの犯人とされる
人物が、被害者にたまたま触れて
しまっただけなのか、あるいは故意に
触ったのか、揉んだのかというところ
まで判別できるほど精密なんです。
繊維鑑定では、私の手や
指を調べることで、あなたの服の
繊維が付着しているかどうか、つまり
触ったかどうかが分かるんですよ。
体の横に下げていた右手の義手の方
なら、あなたのスカートに少しは
触れていたかもしれませんし、
繊維だって出たかも知れません
けどねぇ…左手はずっとつり革を
掴んでましたから、
絶対に出ないでしょうねぇ…」