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本編
「あなたは必要ない」と言われている
ような気がして、俺は少し惨めな
気持ちでその場を離れた。
嫁は無邪気な子供のようなところが
あるから…悪気は無いのか……?
娘には来ないと思っていた
“父親を嫌がる時期” が
来てしまったのだろうか……?
俺は嫁と娘の気持ちを確かめる勇気も
なく、結局何も尋ねることが出来ない
まま2人を旅行へ送り出した。
一人とり残された俺は、病気で倒れた
親族の見舞いや、仕事関係の諸々で
とにかく忙しく、休日返上で
バタバタしているうちに
2週間が過ぎていった…。
旅行から帰って来た嫁と娘は、
軽井沢での日々が余程楽しかった
のか、思い出話ばかりしていた。
「緑のお庭で食べたバーベキュー、
美味しかったよね〜♪」
「湖のほとりのカフェ素敵だったな〜
ハーブティーまた飲みたいな〜…」
「お友達のパパ、
かっこよかったよね♡」
などと、俺を蚊帳の外にして、
2人だけで盛り上がっている。
戻って来てからずっとこの調子で、
俺は全く会話に入れてもらえず…
(また学校が始まったら、
元の2人に戻るだろう)
と思って我慢していたのだが、
このあと、夏休みが終わってからも、
2人の俺に対する態度は酷くなって
いく一方だった……。
俺は建設会社勤務で、
基本はスーツで出勤しているのだが、
現場に出向くことも多く、作業着を
着る機会も多い。車通勤なので、
作業着のままで帰ることもよくある。
それは今に始まった事では無いし、
この10年以上、嫁も娘も、その事に
ついて何か言ってきたことは無かった。
なのに突然この頃から、作業着で
帰宅すると、嫁があからさまに
嫌そうな顔をするようになった。
「ただいま」と言っても、
「おかえり」とも言わずに、
わざとらしく大きなため息をつく。
常に不機嫌で、俺から話しかけても
ロクな返事をしてもらえず、嫁との
会話はどんどん減っていった……。
そして嫁のこのような態度は、
すぐに娘にも影響を及ぼしていった。