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本編
タナカ「えぇ…どうやらその
お風呂で、スカコさんは
感染してしまったようなんです。
カビの胞子は家中に漂っては
いたのですが、カビの特性として、
湿気と、気温が高めの条件で
増えやすいので、旦那さんの
押入れの中と浴室には、特に多くの
カビが繁殖していました」
スカコ「それで…そのカビは、
いったいどんなカビなんですか?
私がこんな風に隔離されたって事は、
珍しいカビなんですよね?」
タナカ「はい。実は近年、
欧米やアジアを中心に、致死性の
カビが世界的に流行してまして。
日本では今まで、感染の報告が
数件しかないカビでしたので、
私達も慌ててしまって…
ですが、同種のカビにも
様々な株が有りまして、
今回、スカコさんが
感染したカビは、治療薬が効く株で…
本当に、不幸中の幸いでした。
海外には治療薬が効かない、
耐性化した株も有りまして、
その場合、感染すると致死率は
30%、50%の株もあると
報告されています」
スカコ「致死率50%……そんな
恐ろしいカビがあるんですね……
それで…今回のカビは…海外から、
あの観葉植物の鉢植えに
くっ付いて来たって事ですか…?」
タナカ「恐らく、
そうではないかと考えています」
マサト「元々はさぁ…
あの押入れには物が沢山入ってて…
枯れた観葉植物の鉢も
入れてあったんだ…
子犬を入れる為に物を出す時、
鉢を倒して土がこぼれちゃって…
もちろん、ざっとは片付けたんだよ?
でも…ちょっと残ってて…
掃除機なんかかけたらさ、
絶対スカコに疑われるから…
そのままにしてたんだ…」
タナカ「湿度が高く、暖かい、
密閉された空間に、子犬の体温、
洗った子犬の水分、ペットシートの
糞尿なんかも加わって…
いわゆる“カビの温床”に
なってしまったようです。
カビ菌の除去もかなり困難で、
結局、押入れ内の床板や壁を、
剥がす事になりました」
マサト「ゴメンよー!まさか
こんな事になるなんて、
思ってもみなかったんだー…
子犬をお風呂入れた後、
ちゃんと乾かそうとしたんだよ?
自分の髪の毛も乾かさないこの俺が!
でもさー。子犬がドライヤーを
嫌がって、吠えたりするから……」