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本編

今まで忘れていた涙が急に

込み上げてきて、私は嗚咽しながら

泣き出してしまいました。

 

主任は「大丈夫だよ…大丈夫…」

 

と背中を撫でながら、

ただ寄り添ってくれていました。

私はしばらく泣いた後、

顔を上に上げ、両手で自分の頬を

軽く叩いて気合いを入れ直しました。

(まだ泣いてる場合じゃない!)と、

自分に言い聞かせ、

「もう平気です!」

と主任に告げました。

 

一旦マンションに戻った私は、

カレンダーの今日の日付に

休みの丸を付け、顔を洗って、

普段着に着替えました。

そして再び病院へ行き、

タカシの病室の扉を開けて、

さも知らせを聞いて

駆けつけたようなふりをしました。

様子を見に来たタカシの職場の上司に

挨拶し、事故に関する説明を聞いて

から、必要な手続きを済ませました。

入院に必要な物を揃え、タカシが

喉が渇いたと言えば飲み物を用意し、

甲斐甲斐しく世話を焼きました。

そして翌日は興信所へ出向き、

スマホで撮ったタトゥー画像も

見せながら事情を説明し、

調査の依頼を済ませました。

 

数日後、

タカシの退院が決まりました。

 

スカコ「入院、短く済んで

良かったね〜」

 

タカシ「世話かけちゃったな…

仕事の合間にも見に来てくれて……

色々ありがとう。

心配かけて悪かったな…」

 

スカコ「いいのよ。

こんな時に助け合うのが夫婦でしょ?

それより、まだ痛むんだから、

無理しないでよ!会社も、しばらく

休んでいいって言ってくれてるん

だから、家で大人しくしててね!」

 

タカシ「わかってる…

それより、俺の荷物…

会社に取りに行きたいんだけど…」

 

スカコ「荷物って?

何か必要な物でもあった?」

 

タカシ「いや…スマホとか…

ロッカーに入れっぱなしだし…」