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本編
(このまま、害しか与えてくれない
祖母や、冷たい父親の側で
成長するよりも、私が1人で
頑張って愛情深く育てた方が、
リンの為には良いに違いない!!
離婚して苗字が変わるなら、
リンが小学校に上がる前が
いいんじゃないかしら…)
そう考えた私は、リンが
保育園の年長さんのうちに、
前夫に離婚を申し出た。
慰謝料無しで、親権は私が持ち、
前夫から毎月養育費を
支払ってもらう事となった。
だがもちろん、親子が暮らして
行くには私が働いて
稼がなくてはならない。
私は出産問題で両親と
揉めてしまったせいで、
実家に頼る事も出来ず…
大学を中退したため、
最終学歴は高卒。おまけに6歳の
子供を抱えたシングルマザー…
3年に満たないパート経験しか
無い私にとって、親子2人で
食べていける職を得るのは
容易な事では無かった。
何度も面接を落とされた末に、
私を採用してくれたのは、
小さな温泉旅館を営む
オーナーご夫婦だった。
子連れ可の寮完備、光熱費と
3食無料、更に制服支給の職場は
本当に有り難く、
『自慢出来るのは体力だけ』だった
私は、感謝の気持ちを込めて、
朝から晩まで懸命に働いた。
旅館の規模が小さいため、
従業員の数も少なかったので、
旅館全体の仕事を全員で
カバーし合い、オールマイティーに
働くという感じだったので、
仲居としての一般的な仕事内容
以外にも、覚えなければ
ならない事が沢山あった。
でも、同僚は優しくて親切な
人達ばかりだし、何より、温泉旅館の
社長と女将でもあるオーナー
ご夫婦が、本当に良い方々で…
各従業員の事情に合わせて細かく
配慮をして下さるので、
あらかじめ覚悟していたよりも、
ずっと働きやすい職場だった。