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本編

その後も、私たち家族は穏やかに

月日を重ねた。一般的に見れば、

いわゆる『幸せな家庭』だったと思う

ところが、私が小学生から中学生に

なると、反抗期というものの

影響なのか、それまで見て見ぬ振りを

し続けてきた『家族に対する疑問』が

私の中で次第に膨れ上がっていった。

 

(母が退院してきたあの日、

私は確かに、別人だと思ったんだ…

顔も、体つきも、声も、それから香り

も、違うと感じたのを覚えている。

あれは本当に、ただの『幼い子供の

思い込み』だったんだろうか…)

 

もはやおぼろげになってしまって

いた、『母が突然居なくなった日』や

『母が退院して来た日』、

そしてその前後の記憶を懸命に手繰り

寄せては、繰り返し考え続けた。

入院前、母は私をとても

可愛がってくれたのに…

急に居なくなったりしたら、

私が不安になると分かっていて、

どうして何も告げずに

入院したんだろう…

 

もしも突然倒れたとか

だったとして、父と祖父母は、

どうして私にそのことを隠して、

「大事な用事で、しばらく帰れない」

などと嘘をついたのだろうか…

何の病気で、どこの病院に

入院していたのか尋ねても、

両親も祖父母も、

誤魔化すばかりで答えないし…

 

だいたい、あの頃以前の写真が、

家に一枚も無いなんて、

どう考えてもおかしい。

保育園の頃までは、私の赤ん坊の頃の

アルバムを見ていた記憶があるし、

入園式や運動会、休日に母と

あちこち出かけた時などに、

写真を撮った記憶もあるのに…

家族全員で何かを隠し、

私を騙しているのではないか…

 

もしかして、

母が入れ替わったのではないか…

そんな考えが頭から離れなくなった

私は、家族に隠れて、

こっそり調べることを決めた。