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本編
チナツ「パパがー!
チナツに文句言うのぉ」
ヤスコ「ろくに家の事もしない、
家族を顧みもしない、
仕事人間のくせして。
チナツをしつけようだなんて、
10年早いわ!」
ヤスコはぎゃあぎゃあ大声をだして、
俺にくってかかってきたものだった。
これは、俺も良くない。
今思えば、当時のチナツは小学校
3年生で、まだ矯正の余地があった。
しかし、ヤスコの猛抗議に辟易した
俺は、屈服してしまったのだ。
以来、娘のしつけには
あまり口を出さないようになった。
手を抜いた事を、
俺はつくづくと後悔した。
どんなに言い争っても、
手を焼いても、娘のためを思えば
踏ん張るべきだった。
仕事の忙しさと、妻にあれこれと
言われる面倒さに負けて、
尻尾を巻いて逃げてしまったのは、
俺の生涯で最大級の失敗
だっただろう。
スカオ(俺の、この事なかれ主義が、
家庭を壊した原因なんだ)
皿洗いをしながら、俺は自分の
不甲斐なさにも腹を立てた。
たぶん、俺の中では、
妻への負い目的なものがある。
学生時代、俺は起業に奔走して、
当時は彼女だったヤスコを
かなり放置していた。
スカオ「ごめん、ヤスコ。銀行の
融資相談に行かなきゃいけない」
ヤスコ「また約束ドタキャン!?
これで何回目よ!」
スカオ「ごめん、ほんとにごめん。
俺が行く必要はなかったはず
だったんだけど、ちょっと
状況が変わってしまって」
ヤスコ「言い訳ばっかり、
もうやだぁ!」
約束しては、急な商談でブッチする。
その繰り返しで、ヤスコを
随分と泣かせてしまった。
しかも、流産までさせた。
卒業間際に、ヤスコが
妊娠したと報告してきた。
ヤスコ「スカオ、
お腹に赤ちゃんが……」
スカオ「ほんとか!?やった!」
ヤスコ「喜んでくれるの?」
スカオ「もちろんだ!
結婚しよう!」
威勢よくプロポーズしたは
いいものの、会社を興した直後
だったために、何とか軌道に
乗せなければと焦っていた。
相変わらずヤスコを放り出して
いたのが、彼女にとっては
強いストレスになったのだろう。
悲しい事態になり、
妊娠が怖いと言わせる事態に陥った。