前回の話はこちら▼
1話から読みたい方はこちら▼
本編
スカコ「いつもより早いね…
具合悪い?」
マサト「しんどいから、
1時間早上がりにして帰って来た…」
スカコ「それはお疲れ様…
ご飯は?食べられそう?」
マサト「うん…ご飯は食べたい…」
スカコ「そっか、良かった…
唐揚げと温野菜の準備してあるん
だけど…揚げ物はやめとこうか。
鶏肉も野菜と一緒に蒸して、
蒸し鶏と温野菜なら大丈夫そう?」
マサト「うん…それでいい…」
スカコ「じゃあ、手洗いとうがいを
したら、もう部屋で寝てて。
ご飯持ってってあげるから」
マサト「えっ?部屋は…いいよ、
いつも通りダイニングで食べるから!
運ばせるのも悪いし!」
スカコ「体調悪いんだから、
遠慮しなくてもいいよ?」
マサト「いい、いい!部屋、
散らかってるし、
ダイニングがいい!」
スカコ「そうなの…?
まぁ、マサトがそう言うんなら…」
(なんかおかしいな…)
私は小首をかしげながら台所に
向かい、蒸し器に水を入れて
火にかけた。急なメニュー変更では
あったが、味付け蒸し鶏と温野菜は
予想以上の美味しさで、
今後のレパートリーが
また一つ増える結果となった。
スカコ「あ、そうそう。荷物届いて
たよ。階段の所に置いといたから」
マサト「うん…部屋に
行くとき持ってく…」
スカコ「ねぇ、もう通販もダメだよ。
本当に家計がピンチなの。
何か新しいものを買うとか、
お金のかかる事を始めるとか、
今はそんな余裕無いからね?」
『買う』の所を、あえて『飼う』にも
聞こえるような言い方をして、
私はダメ元のサブリミナルで、
マサトに『犬は飼えない』と
訴えかけようと試みた。
それにこれなら、勝手に本を見た事を
伏せたままで、節約話の一環として
釘を刺しておけるだろう。
マサト「うん…分かってる…」
具合の悪いマサトは、いつになく
素直に返事をしていたが、
本当に分かってるんだか…