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本編
元嫁「えー。ただ、
どうしてるのかなーって。
久しぶりに会えたっていうのに、
そんな怖い顔しなくても
いいじゃなーい!」
幸せだった頃には可愛くて
仕方なかった笑顔なのに、
今はただ不気味に感じるだけだった。
俺「時間が無いから、要件だけ
手短に言ってくれ。もう親しく
話すような仲でもないだろ?」
元嫁「そうだよねー。忙しいよね、
今は社長さんになったんだもんねー!
そっか…。じゃあ、何かお手伝い
でもしようか?家の事とか」
そう。俺は今、前に勤めていた
会社の、さらに親会社で
社長の座に就いていた。
突然で申し訳ないのだが、
じつは俺はもともと建設会社の
経営者一族で、元嫁と結婚していた
時は、叔父が社長する子会社で
働いていたのだった。
ただし、きちんと試験を受けて
入社したし、子会社の中で俺の素性を
知っていたのは叔父だけだった。
本来、俺が親会社を継ぐなんて話は
全く無くて、小さい頃から何度も
言い聞かされていたのは、
『伯父さんが社長をしている親会社に
入社して、平社員からスタートして
仕事を学べ』ということと、
『役員候補ではあるが、実権を
握れるかどうかは、俺の実力次第だ』
ということ、それだけだった。
だが俺は、まず現場から知りたいと
考え、親会社の平社員から
スタートするのではなく、
子会社の平社員からスタート
することを選んだのだった。
(家柄や親の金じゃなく、俺自身を
見て、愛してくれる人と結婚したい)
という思いから、
家の事情を伏せて元嫁と
付き合っていた俺は、
プロポーズ直前になって
ようやく全てを打ち明けた。
建設会社の経営者一族であること、
でも子会社の平社員からスタート
したこと、役員になれるかどうかは
実力次第だということ、
そこそこ良い暮らしはさせて
あげられると思うが、大金持ちに
なれるような予定は全くないこと…。