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本編
娘は、嫁と一緒になって
“作業着を着た俺” を
嫌がるようになり、
やがて2人で “俺自身” までを
嫌がり、避けるようになっていった…
これまで俺の帰りを待って、
3人で囲んでいた夕食は、
俺抜きで終わらせるようになり、
俺には何の連絡もなく、
たびたび2人で外出しては、
夜遅くに帰ってくるようになった。
俺は何度も話し合いの場を
持とうとしたが、無視されるか、
逆ギレされてしまう。
為す術もなく、日常的に拒絶され、
俺はどんどん孤立するように
なっていった……。
実はこの頃、俺は仕事の面で大きな
転機を迎えていた。以前ならばその事
を、もっと前の段階から、嫁と娘に
気軽に話せていただろうと思う。
だが、夏休み以降、話しづらい
雰囲気がどんどん加速していき、
俺は話すキッカケを掴めぬまま、
時間だけが過ぎて行った……。
(今は辛いけど、きっとこれは
一時的なものだ。)
(これが決定したら2人に話そう!
きっと喜んでくれる!)
(状況が変われば、きっとまた以前の
ように3人仲良く暮らせるはずだ!)
そう信じて仕事に打ち込み、
一つ一つ着実に準備を
進めていくしかなかった。
……ところが……
(これでやっと嫁と娘に報告出来る
段階まで確実に出来た!)と思った時
決定的な事件が起こってしまう。
そして俺の人生は、
“家族との離別” という最悪の
展開へと進んでいくのである……。
その日、俺は方々への挨拶回りで
身も心もクタクタで、最後の
訪問先の現場から作業着で帰宅した。
(最近は出来るだけ作業着で帰らない
ようにしていたが、今日はそれよりも
早く帰って報告がしたい!)
(ついに、嫁と娘が驚くような
報告が出来る!!久しぶりに嫁と娘の
喜ぶ顔が見れるに違いない!!)
俺は、浮き立つ気持ちを抑えながら、
リビングのドアを開けた…。