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本編
俺はおどけた表情を浮かべたままで、
今日1日のアユミの様子を
思い返してみた。
(朝の時点では、アユミは
リコにとても親切で、
特におかしな点は無かった……
様子がおかしくなったのは、
昼のメッセージから…赤飯を作る
作らないの話題からだった……
今、怒鳴られたのも、
どうも炊飯器の中の赤飯が原因……
と言う事はやはり、アユミの
おかしな態度の原因は、
あの赤飯としか考えられない!!)
確信に近い予感を覚えた俺は、
リモコンでテレビをつけ、
それを見ているふりをしながら、
窓に映るアユミを注意深く観察した。
アユミは俺達の様子を伺いながら
炊飯器に近づくと、エプロンの
ポケットからビニール手袋を取り出し
何故かわざわざそれをはめて、
リコの茶碗に赤飯をよそい始めた。
しかも、どう言うわけか炊飯器から
顔を背け、手を最大限に
伸ばしたおかしなポーズで!
俺は思わず「お前…なに
やってんの?」と突っ込みたくなる
気持ちをグッとこらえた。
(もしも俺の疑念が全くの
的外れだとしたら…口に出して
指摘した途端に、お祝いムードが
壊れてしまうかもしれない…)
このめでたい日を、俺のせいで
ぶち壊しにしたくなかった。
そして俺は、アユミの行動が
おかしなものではないと
思えるような、
納得出来る理由を探し始めた。
(もしかして……アユミは
赤飯の匂いが苦手とか…?
それなのに、リコの為に
頑張って作ってくれたとか…?
それか…………あぁもう
思いつかん!!どう考えても
よそい方は尋常じゃないだろ!!!)
俺は何食わぬ顔を装ったまま、
心の中で頭を抱えた。
(アユミの事を信じたくて、ずっと
疑いの気持ちを誤魔化し続けて来た
けど……もうこれ以上は無理だ!!
具体的な内容までは分からないが、
アユミが何かおかしな物を赤飯に
入れたのは明白じゃないか!!!)
もう認めざるを得なかった。
(どうも湯気を避けている様子
だから……むせるような物か…?
酢??唐辛子??
まさか、いくらなんでも洗剤とかじゃ
ないよな…???アユミは一体
どう言うつもりなんだ???
わざわざ祝いの席で、リコに嫌がらせ
をしようとしているのか…???)