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本編
スカオ「罪を背負ったからこそ、
家庭が正しく回るように手を尽くす
べきだった。今となっては、
俺の言葉は届かないでしょう。
だから、行動で理解を
促すしかないと思います」
甘やかした俺も悪いとは
分かっているが、このままずっと
甘いままでは全員がダメになる。
厳しい現実を突きつけて、
一刻も早く目を覚まさせる。
今の俺には、それしか
できる事は無い。
もう決意は揺らがない。
俺は置手紙を残した。
妻と娘、それぞれ一通ずつ。
スカオ「ヤスコへ。22歳で
結婚して、21年間。振り返れば、
決して良い家庭ではなかったと思う。
流産の原因を作った事で、君に負い目
を持ってしまい、ずるずると
好き放題な生活をさせてしまった。
でもそれじゃだめだ。
苦しい決断になったが、
荒療治をさせてもらう事にした。
大学卒業後、すぐに家庭に入った
君は、仕事らしい仕事は
全然していない。学生時代に
バイトをしたくらいだろう。
そんな君を、いきなり世間に
放り出すのは酷かもしれないが、
あえて厳しい道を示すのも
愛情だと信じる。
君の浮気も知っている。
興信所で調べてもらった。
随分と若い男だね、
ホストだと聞いているよ。
君と彼じゃ、どう見ても
親子か、ママ活っていうのか?
そんな関係にしか見えない。
俺に放り出された後も、彼と続くかは
疑問だが、まぁ頑張ってくれ。
家の名義は君に変えるよ。
慰謝料も取らない。これから世間の
冷たい風に立ち向かう君への、
最後の情けだと思って欲しい。
もう会う事は無いだろう。健康に注意
して暮らしてくれ。チナツを頼む」
スカオ「チナツへ。
まず、男はATMではない。
そんな都合のいい男はいない。
一時的にそんな立場に甘んじる男が
いたとしても、永遠には続かない。
自分の人生は自力で切り開くものだ。
そういう覚悟の無い女性は、
喜んでATMになる男と巡り合う事は
無いと知って欲しい。
行きたい高校に行けなかった
と、文句を言われたけれど、
それはパパの責任ではない。
努力を嫌がった自分の責任だ。
高校三年生の夏を迎えた今、
友達は何をしている?
遊んでいる者はいるだろうか?
みんな大学や就職を目指して
頑張っているはず。チナツはどうだ?
何もしていないだろう。やっている
のは遊ぶことだけだと思う。
適当に毎日を過ごしで
何とかなるほど、人生は甘くない。
パパが娘に教えてあげられる
最後の知識だ。言葉ではなく、
体験で知って欲しい。チナツが
自分で考えて、どうしても大学に
行きたいと決心したら相談しに
来なさい。話を聞く用意がある。
ただし、自分自身の結論であることが
条件だ。これから頑張って、生活する
事の厳しさと向き合って欲しい」