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【ブログ限定】少女「100円で買えるお誕生日ケーキありますか」【中編】

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【ブログ限定】少女「100円で買えるお誕生日ケーキありますか」【前編】
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【ブログ限定】少女「100円で買えるお誕生日ケーキありますか」【後編】
前編はこちら▼ 中編はこちら▼ 本編 祖父の言葉は、すぐに現実化した。 店の周りを、スイーツを買うとは 到底思えない、ごつい面構えの男たちが うろつくようになった。 看板を蹴り飛ばされたり、 わざとらしく店をのぞき込んで チンピラ風の男「う...

本編

スカ太郎「100円ですか」

 

少女の堅い決意に応じてあげたい

気持ちはやまやまだが。

100円で買えるものはない。

ご希望のホールケーキはおろか、

一番安いシュークリームでも難しかった。

税込みで130円。

バースデーケーキとなれば、

最低でも1800円からというのが、

うちの店の値段設定だった。

 

スカ太郎「どうしても、

お誕生日ケーキじゃないとだめなの?」

 

ミヤコ「はい。

あのう、今日はお父さんの、

二番目のお誕生日で」

 

スカ太郎「二番目のお誕生日?」

 

妙な事をいうものだ。

誕生日に一番も二番もないのだが、

この子はどういう意図で

「二番目のお誕生日」と

言っているんだろう。

正直に言って、意味が分からなかった。

ただ、どうしてもケーキが欲しい

という事だけは、よく伝わってきた。

 

スカ太郎「そうかぁ、

お父さんの大事な日なんだね」

 

涙目になっている女の子を顔を見つめた俺は、

この子の思いの強さにほだされ始めた。

どうしようか。

出来れば売ってあげたい。

俺も迷った。

 

その時だ。

俺の背後から

 

祖父「承知しました。

では、誕生日ケーキにお名前を書いた

チョコプレートを準備します。

お父さんのお名前は?」

 

祖父の声がした。

いつのまにか、厨房から出てきていたのだ。

びっくりしている俺にかまわず、女の子は

 

ミヤコ「買えるんですか!?」

 

ぱっと表情を明るくした。

 

ミヤコ「マサヤっていいます」

 

スカ太郎「マサヤさんですね」

 

祖父の目くばせを受けながら、

俺は聞いた名前をメモに書いた。

ん?

なんか、どこかで聞いたような気がする。

それもそのはず。父の名前だった。

まぁ大して珍しくもない。

それ以上は特に感想は無かった。

 

スカ太郎「お年は?」

 

ミヤコ「48歳です」

 

おお、もはや祖父でも通じる年齢だ。

この子が一所懸命なのもわかる気がした。

 

作業が始まった。

店頭には、最小サイズの

4号から6号までは常時並べてある。

7号以上は予め注文を受けてから、

当日までに用意するのだが、

今回は最小で間に合う。

 

ちなみに、号数を3倍すると、

ケーキの直径が分かる。

お買い上げは12センチの

生クリームコーティングケーキ、

標準タイプだ。

 

標準とはいえ、祖父がこだわり抜く

イチゴショートをベースに

しているのだから、味は折り紙付き。

祖父から俺に渡されたケーキは、女の子へ。

喜んで、スキップしそうな

足取りで店を出て行った。

 

スカ太郎「あれで良かったんですか?」

 

小さなお客様を見送ってから、

祖父に聞いてみた。

軽いうなずきが戻ってきた。

 

その日の夜。

俺は祖父に呼ばれた。

気難しい顔をして

 

祖父「実はな」

 

俺が今まで知らされていなかった

店の実情を語り始めた。

どうやら、経営が厳しいらしかった。

 

祖父「修行中のお前がやる気を

失っては困ると思ってな。

今まで言わなかったんだが、

この店の存続はかなり厳しい」

 

スカ太郎「やっぱり、

費用が掛かりすぎなんじゃ?」

 

生意気を言うなと怒られるのを

覚悟で、俺は意見してみた。

薪を使って生地を焼く、

生クリームをはじめとする材料は

厳選されたもの。

商品も大量生産はできない。

 

個人店なればこそのこだわりだが、

効率化や合理化とは無縁だ。

それに見合うだけの来客があればまだしも、

この頃は客足も遠のいている。

数少ない常連は、高齢の方ばかり。

しょっちゅう買いに来られるわけじゃない。

 

祖父「それもあるんだが、

問題はもっと根深い」

 

ところが、祖父は意外なことを言った。

 

祖父「平たく言えば、借金のかたに、

立ち退きを迫られている」

 

スカ太郎「借金!?」

 

あまりにも意外だった。

そこまで、店は追い詰められていたのか。

 

スカ太郎「い、幾らあるの?」

 

祖父「言いたくないが、1千万はあるな。

どう計算しても返せるあてはない」

 

スカ太郎「そんなばかな」

 

祖父「残念だが、事実だ。

あいつの仕業なんだ」

 

祖父が苦い顔をした。

あいつとは、聞くまでもない。

俺の父親だろう。

 

祖父「たちの悪いところから借りたようだ。

いつのまにか、

店に抵当権がつけられていた」

 

スカ太郎「裁判したら

勝てるんじゃないか、それ」

 

祖父「おまえ、たちの悪いところが

どんなものか、知らんだろう。

裁判結果なんか鼻で笑う連中だぞ。

店に火をつけてでも立ち退かせるなんて、

ごく当たり前にある話だ」

 

祖父は淡々としていた。

それだけに恐怖がこみあがってきた。

うちの店は、立地は悪くない。

薪を使うので、煙の被害を避けるため、

祖父はわざと駅前や人が多い場所から

離れた場所に店を構えた。

とはいえ、再開発が進んで、

このあたりにもマンションが

建ち始めている。

祖父がいう「たちの悪いところ」は、

地上げを狙う連中なのだろうか。

 

祖父「連中、少しずつ動き始めている。

様子がおかしいやつらを見かけたら、

無理に追い払おうとするなよ。危ない」

 

スカ太郎「そんな」

 

 

難しい問題だった。

仮に立ち退いて移転しても、

店が存続できるとは限らない。

移動した途端、あっというまに

廃れたなんてケースは、

掃いて捨てるほどある。

それに、薪を使うオーブンが売りの店を、

どこに移転させるのか。

煙が問題になって、

せっかく店を新たにしても、

祖父が嫌う電気オーブンに変更を

余儀なくされたら意味がない。

心配になった。