こちらもおすすめ▼
本編
私の名前はアスカ。
36歳のパート主婦だ。
夫のダイスケと、小学校1年生の
息子のハルトの、3人家族で、
郊外の一軒家で暮らしている。
この一軒家には先々月に引っ越して
来たばかりで、それまでは、
近くのアパートに住んでいた。
アパート暮らしの時は、
ある住人が本当にストレスで、
(早く引っ越したい!)と、
いつも願っていたものだった…。
“ある住人”とは……下の部屋に
住んでいた主婦、ドロミだった……。
そのアパートには子育て世帯が多く、
子供の声や足音などは日常茶飯事で、
おまけにペット可だったので、
深夜や早朝以外なら、少々の騒音は
お互い様、という風潮だった。
そんな中、よりによって
真下の部屋の住人、ドロミだけが、
毎日のように住人達に文句を
つけて回っていたのだった…。
私は、アパートに引っ越した
初日から、ドロミの洗礼を受けた。
その時はひたすら謝り、
「これからはご迷惑をおかけしない
ように気をつけます!」
と言って、
用意してあった挨拶用の粗品を
渡して帰ってもらったのだが、
後から他の住人達に挨拶に回ると、
みんな口を揃えて、問題は
ドロミの方なのだと教えてくれた。
「もうドロミさんに文句
言われました?やっぱり…。
全然気にしなくていいですよ!
あの人は、周り中に文句ばっかり
言ってる人だから!」
「あのドロミって人、自分だって
犬飼ってて、しょっちゅうワンワン
吠えてるのに、自分の事は棚に
上げて、人にはちょっと音出しただけ
で、ガミガミ言ってくるんですよ!」
「ドロミさんねぇ…。
みんな困ってんのよ…。
管理会社も大家さんも、
わかってるんだけどね…
出て行ってもらうのは、
なかなか難しいらしいのよ…。
まぁ、気にしないことよ!」
理不尽な事を言われたら、
すぐ管理会社にクレームを入れるよう
勧められ、お詫びの品などは
絶対に持って行かないように。
と注意も受けた。
「うっかり菓子折りなんか渡したら、
味をしめてどんどん文句言ってくる
ようになるから!」
私は
(挨拶用の粗品も、渡さない方がよかったかな…)
と、少し後悔したのだった。