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本編

スカオ「チーフ。お静かに願います。

続けます。

 

 

私は、その人の記憶を呼び起すたびに、

すぐ「先生」と言いたくなる。

執筆時も、気持ちは同じだ。

よそよそしい頭文字など、

とても使う気にならない」

 

 

ざわつきが、一挙に大きくなった。

最初は「適当か?」「あてずっぽうに

読んでいるんじゃないか?」

といった声が多かった。

 

 

しかし、俺が読み進めるにつれ、

誰も疑いを口にしなくなった。

おおっというどよめきが聞こえる。

 

 

驚愕して、目の他に口も真ん丸にしている

ノリオの様子からして、

俺が和訳のふりをして実はでたらめに読んでいる、

とは思えなくなったのだろう。

 

 

スカオ「私が、先生と知り合いになったのは鎌倉である。

その時、私はまだ若々しい書生であった。

とりあえずここまで。

誰の小説か、わかるかな?」

 

 

生徒に問題を振ってみたら、

一人がそっと手を挙げた。

 

 

指名すると、彼は

生徒「作者は夏目漱石、作品は『こころ』です」

みごと正解を出した。

 

 

俺はぱぁっと顔を笑い崩して、彼に拍手を向けた。

スカオ「正解!よく勉強してるね、素晴らしい」

生徒は照れ臭そうに、でも嬉しそうな笑顔を見せた。