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本編
私は、同僚から「昭和か!」と
笑われてしまった話を、
面白おかしく話して聞かせた。
男性は少し笑って、
「そんなことないのにね。
編み物なんて、すごい才能だよ」
と褒めてくれた。
名前を尋ねると、
男性は『タカハシ』と名乗った。
タカハシさんは、聞き上手
・話し上手で、とても自然に、
心地よく会話が続いた。
その日から、毎日公園で編み物を
しながら、タカハシさんと
話をするのが私の日課になった。
自分だけ食事をするのも気が引けて、
私は思い切って、タカハシさんにも
お弁当を作ることにした。
スカミ「あの…。これ…。
タカハシさんの分も作ってきたので…
もしよかったら…」
(もしかして、失礼じゃないかな…)
と少し心配しながら、
私がお弁当を差し出すと、
タカハシさんは、目を丸くした。
タカハシ「え?スカミちゃん、
私の為にお弁当を
作ってくれたのかい?」
スカミ「はい…。
自分の分を作るついでですけど…」
タカハシ「うわぁ〜…嬉しいなぁ…。
どうもありがとう!!
お弁当を作ってもらうなんて、
何年ぶりだろうか…」
お弁当箱の蓋を開け、
とても嬉しそうな顔でしばらく
中身を眺めていたタカハシさんは、
一つ一つ、ゆっくり味わうように
食べ始めた。
涙を流しながらお弁当を食べてくれる
姿を見て、私は、タカハシさんの
人生を想像せずにはいられなかった。
今はホームレスみたいだけど、
元々は親や家族が居たのだろうし、
家だって、きっとあっただろう。
話をしていていつも思うのだが、
タカハシさんが何故、今このような
生活をしているのか腑に落ちない。
私の疑問に対して、会社の上司よりも
ずっと的確に、心に響く答えを
くれるし、決して他人を貶めたり、
気分を害するような言葉は使わない。
私はタカハシさんの過去が気になった
が、尋ねることは出来なかった。