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本編
旅館のスタッフや、計画に協力して
下さった皆さんは、当然大喜びで、
何度も万歳三唱していたし、
オーナーご夫婦は「信じられない…」
と呟いていたものの、火事以来、
ずっと暗く沈んでいたお2人の瞳の
中に、再び希望の光が輝き始めた。
私は本当に嬉しくなった。
(これで、ほんのちょっとは
恩返しが出来たかな…?)
それからおよそ2年後……
旅館はいよいよ、リニューアル
オープンの日を迎えた。
外観は、以前の建物のイメージを
踏襲し、数寄屋造りを採用した。
内装や設備には、若い世代の
お客様や海外からのお客様にも
喜んで頂けるよう、最新式の設備を
取り入れた上品な和モダンで統一。
自慢の温泉にも工夫を凝らし、
もちろん全館バリアフリーで、
アメニティーにもこだわった。
お食事の方は、これまで旅館で長年
メニュー開発を行ってきた料理長と、
お客様のご要望を直に感じてきた
仲居の先輩方と一緒にチームを
組んで、地元の人気飲食店さんからの
アドバイスも参考にしながら、
メニューを開発していった。
オープン前には、様々な形で力を
貸して下さった大勢の方々を招待し、
完成報告会を行った。
クラウドファンディングの時に
取り上げてくれた地元の新聞社や
テレビ局にも連絡を入れ、もう一度
取り上げてもらえるよう働きかけたり
リンにも協力してもらって、ネットや
SNSを駆使して宣伝活動も行った。
その結果、有り難い事に新旧多くの
お客様からご予約を頂き、旅館は
常に数ヶ月先まで満室の大盛況。
社長と女将は、すっかり元の元気を
取り戻し、旅館の顔として、
活き活きと働いている。
リンは現在高校生となり、
リン「私、将来この旅館で、社長や
女将、ママと一緒に働きたいの!」
と言ってくれていて、高校卒業後は、
地元の専門学校の旅行学科へ
進学する予定だ。
マサキさんは逮捕後、わりとすぐに
有罪が決定し、現在も絶賛塀の中。
結婚運は壊滅的に最悪な私だが、
その分、子供運や仕事運、上司運や
同僚運は最高なので、まぁ、いいか!
と思う今日この頃だ。
この先も、ずっとこの旅館で、
オーナーご夫婦の元、良い仲間達と
そして将来はリンも一緒に働き
ながら、歳をとっていくのも
悪くないなぁ〜…なんて、
思っているのだ。
完