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本編
チナツ「とにかくうるさいんだよ」
スカオ「チナツ!」
チナツ「仕事しか出来ない、
家庭人失格のパパが何を言っても
聞かないよ。あたしは知ってるん
だもん、ママを流産させたこと」
ヤスコ「そうそう、こんな冷血人間は
無視していいわよ。そんな事より
チナツ、お勧めドラマをやっと
第4シーズンまで見終わったわ。
これから第5シーズンなの、
一緒に見よう」
チナツ「ママ、頑張ったじゃん!
追いついてくれるの、待ってたよー!
パパ、部屋に行ってて。
ママとドラマ見るから」
娘に邪険にされて、
俺の決意は早くもぐらついた。
出直すか。こちらの話に集中させる
ためにも、日を改めた方がいい。
俺はやむなく席を立った。
俺のベッドルームは、
4LDKの我が家で一番狭い部屋だ。
ヤスコとは寝室を分けられている。
俺はベッドサイドに腰かけて、
興信所から渡された調査報告書に
目を通した。読めば読むほど、
心が病みに落ちていく気がした。
しばらく読みふけっていたが、
喉が渇いた。リビングに行くのは
気が進まなかったが、
行かなければ水も飲めない。
仕方なく部屋を出た。
リビングのドアをそっと開けると、
妻と娘の会話が聞こえて来た。
チナツ「あーあ、なんであんなのが
パパなんだろ。つまんないおっさん
だよねー。ケチだし」
ヤスコ「あんなのでも稼いでは
いるんだよ。まぁ旦那はATM。
金だけあればいいんだ、そう
割り切ってれば、我慢できるから」
チナツ「ママ、大人だねー!
そっか、ATMかー。
あたしも適当にATM男探そうっと。
ママはさぁ、パパのATM性能
落ちたら、さっさと捨てちゃいなよ。
ホストのリュウセイくんだっけ、
彼とくっついちゃえばいいのよねー。
だってイケメンだしー」
くらっとなった。
何だこの会話は!
チナツは、何てことをヤスコに
言うんだ!しかもけらけら笑って!
増長するにも程があるだろう。
もう手が付けられないほど、
妻も娘も図に乗ってしまっている。
どうしたものか。
考え込んでいたら、二人は
笑いながら何か相談を始めた。
どうやら、旅行の計画らしい。
……そうか。そういう事か。
俺は、娘が妻に言い放った
とんでもない言葉を念頭に置いて、
ある決断を下したのだった。