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本編
自分はもうすぐこの世から
居なくなってしまうのだから、
後に残される私のことは、
父と祖父母に託すしかない。
もしかしたら、浮気相手が
次の母になる可能性だってある。
だからせめて、私に優しくして
もらえるようにしなくては。
そう言って、父や祖父母、浮気相手の
気分を害してしまわないよう、
ひたすら我慢し、
耐え続けていたそうだ。
そしてついにある日、私を保育園に
送った後に自宅で倒れて入院し、
2ヶ月も経たないうちに
亡くなってしまったそうだ…
(入院して2ヶ月も経たずに
亡くなったって…じゃあ、
お母さんが亡くなるや否や、
今のお母さんを家に招き入れたって
こと…??そんなの酷すぎる!!!)
入院中、家族は誰も見舞いに訪れる
ことはなく、お葬式もあげて
もらえなかったらしい。
山口さん「それにね…
こんなことをいうのも何だけど、
お母さんのご両親の遺産も
あったはずなのに…
スカミちゃんに残そうと
していたみたいだったけど、
スカミちゃんが受け取って
いないのだとしたら、
いったいどうなったのか…」
そう言って、山口さんは電話の向こう
で悔し涙を流しているようだった。
私はあまりの真実に呆然となり、
何を言っていいのか分からず、
とりあえず山口さんに
お礼を言って電話を切った。
母はあの当時、どんな気持ちで
過ごしていたのだろう…
病に侵されたつらい体で、
5歳の娘ばかりか、
義両親の世話までさせられ、
夫は浮気相手の所から帰って来ず…
それはまさに地獄のような
日々ではなかっただろうか…
その上、自宅で倒れて入院しても、
誰も病院に来てくれず、
死後はお葬式もあげてもらえず…
浮気相手は自分を騙って
家に入り込み、娘に母と呼ばせて、
娘に残したはずのお金も渡されず…
どれほど恨めしかっただろうか…
死んでも死に切れないとは、
このことではないか…
私は5歳だったから…
何も気付かず、1人で苦しむ母を
助けてあげることも出来なかった…
そして今まで
何も知らず、連絡をくれない母を
恨んだことさえあったのだ…
(お母さん…ごめんなさい…
ごめんなさい…)
涙が次から次へと溢れてきた。
ただ、母が不憫でならなかった。