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本編
困り顔の私が英語で助けを乞うと、
警備員は私と息子を庇うように
タツヤの前に立ちはだかり、
落ち着くようにタツヤに警告したが、
タツヤはネイティブの英語が
聞き取れないのか、
日本語で一方的にまくし立てている。
そうこうしていると、
騒ぎを聞きつけた近くの
警備員達が続々と集まってきて、
タツヤを取り囲んだ。
タツヤ「ちょ!スカコ!!
俺はお前の夫だって、
ちゃんと説明してくれよ!!」
女性の警備員が私の横に立ち、
「知り合い?」と聞くので、
私は両手を広げて手のひらを上に
向け、肩をすくめて『知らないわ』の
ジェスチャーをして見せた。
パニックになったタツヤは、
どうにか逃れようとして暴れ、
ゴツい警備員達に
取り押さえられてしまった。
床に押さえつけられたタツヤを見て、
私はふと“ある事”に気が付いた。
最後まで無視を貫こうと計画していた
のだが、どうしてもタツヤに
“ある事”を教えてあげたくなり、
置き去りにする前に、
最後に声をかけることにした。
スカコ「タツヤ、荷物どうしたの?
見当たらないけど?」
タツヤ「……は???」
言葉の意味に気付いたタツヤが、
荷物を確認しようともがくと、
警備員達は慌てて声を上げ、
一層強くタツヤを押さえつけた。
そうなのだ…。タツヤが主人公気取り
で両手を広げて駆け寄って来た時、
荷物はほったらかしとなり、
その後の騒動で、周囲の人達も
警備員達もタツヤに注目していた為、
いつの間にか荷物は全部
盗まれてしまっていたのだった…。
タツヤ「荷物〜!!俺の荷物〜!!
クソ〜!!スカコ〜!!待て〜!!
いや、待ってくれ〜!!!
俺を置いてかないでくれ〜!!!
スカコ〜!!!」
警備員達に両脇を抱えられ、
抵抗してもがきながら、
どこかへ連れて行かれるタツヤ…。
半泣きの叫びだけがロビーに
こだましていたのだった…。