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本編

私はまた申し訳なさと有り難さで

いっぱいになりながらも、

クレハの来襲で引いた血の気が、

メグミさんの声を聞き、安心して

戻って来るような気がした。

ナオキさんは、本当にすぐ

来てくれた。メグミさんは、

ナオキさんがウチに到着した事を

確認してから、やっと少し

安心したように電話を切った。

 

しばらくして部屋にやって来た

警官の話では、マンション下で、

既にクレハを発見・逮捕した

とのことだった。

 

私は通報した際、みんな寝ている

時間のため、サイレンを鳴らさず

来てもらえるよう頼んでおいたので、

サイレンもランプも消してマンション

に到着してくれたそうなのだが、

警官がエントランスからマンションに

入ろうとした時、すぐ横の自転車

置き場の人影に気付いてライトを

向けたところ、包丁を振りかざす

クレハを発見し、現行犯逮捕と

なったらしい。

 

自転車を確認して欲しいと

言われたので、ナオキさんには

子供達の為に部屋に残ってもらい、

私は警察官に先導されて

自転車置き場まで見に行った。

お気に入りの自転車は、

サドルとタイヤが滅茶苦茶に

切り裂かれていて、

私は思わず悲鳴を上げてしまった。

何度も何度も執拗に切りつけられた

無残な自転車からは、クレハの執念が

伝わって来るようだった…。

 

(なんで…。これほどの悪意を

向けられるなんて…。私は何も

間違った事はしていないのに…)

 

もしやと思い、離れた場所に停めて

あった夫の自転車も確認したところ、

同じように切り裂かれていた。

2台とも、ローマ字で名前が入った

お揃いのステッカーを貼っていた為、

ウチの自転車だとバレてしまった

ようだった。

 

(こんな暗い中、こんなに

沢山停めてある自転車を、

一台一台見て回ったの…?

私はクレハから、

そんなにも恨まれてるの…?)

 

理屈の通らない恨みを向けられた

恐ろしさに体が震え出し、

私は立っていられなくなった。

女性警官に抱えられる様にして

部屋に戻り、事情を聞かれた。