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本編

ただ、貿易会社という

仕事の性格上、ときには

海外へ出張していた。

一度出張に行くと、

半月くらいは帰宅しない。

寂しい思いが無かったと言えば、

嘘になる。

 

シュウジロウ「悪いな、

スカ子。また海外出張だ」

 

スカ子「大丈夫よ、頑張って。

ナツカと二人で待ってる」

 

シュウジロウ「何かあったら、

兄貴に言ってくれ。留守中、

おまえ達を見てやってくれと

言っておいた」

 

スカ子「うん、そうする。

ありがとう」

 

この頃には、初恋の気分は

消えていて、私の中で

リョウタロウさんは、頼れる

義兄という存在になっていた。

彼も、私を義妹として扱い、

いつも気にかけてくれていた。

ナツカが小学校の高学年に

なったあたりから。

私と夫の間は、だんだんと

冷え込み始めていた。

出張に出かける時の気遣いは

無くなり、いつのまにか

 

シュウジロウ「おい、出張だ。

荷物を用意しとけ」

 

命令調で準備しろと、

言いつけられるように変わった。

リョウタロウさんへ一言

というのも無くなっていた。

 

スカ子「あの。

リョウタロウさんには、

出張の話はした?」

 

シュウジロウ「はぁ?

別に兄貴にいちいち断る

必要はないだろう」

 

スカ子「それはそうなんだけど」

 

シュウジロウ「何だよ、

言いたい事があるなら

はっきり言えよ」