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本編
これが美味いんだ。
味が濃いし、甘酸っぱさも
俺の好みにばっちり、
ラベルを頑張って翻訳したところ、
日本の既存製品と比べて栄養価が
高かった。これも気に入っている。
難点は、買いにくいという部分だな。
まだ国内に出回っていない。
販売経路が無いので、個人輸入
しないと手に入れられないのだ。
時間も手数料もかかる。
それでも買いたいと思うくらい
美味いんだけどな。
一本900ミリリットルの、
俺の密かな楽しみ。
会社にも何本か持ってきておいて、
社員用冷蔵庫の片隅に入れてある。
俺は、休憩がてら、
社員向けの談話室に来ていた。
コップに並々と注いで、
さて味わうかという時。
ヨシノ
「うわぁ、何だそのドロっとした液体は」
3年先輩の同じ営業部所属、
ヨシノに嫌味ったらしい
声をかけられた。
ああ、いつものやつだ。
せっかく美味しいトマトジュースを
楽しむ、憩いの一時だっていうのに、
なんでこんな口を開けば嫌味と
マウントばっかりな男と、
顔を合わせなきゃならんのだ。
スカ太郎
「この間も、似たような事を
言ってましたよね、先輩。
トマトジュースですよ」
ヨシノ
「よくそんなもの、飲む気になるな。
コーヒーの方が美味いじゃん」
スカ太郎
「放っておいてくださいよ。
そりゃコーヒーも、最近は
健康効果が注目されてますから、
いいものだと思いますけどね。
俺には俺の好みがあるんです」
ヨシノ
「家で飲めよな、家で」
別に迷惑をかけているわけじゃない
のに、嫌そうな顔をするヨシノだった。
もっと言い返してやろうかと
思ったが、この男は、口は達者だ。
何せ、以前に社長賞を取った事が
あるくらいで、仕事もそこそこ出来る。
言い合いになったら面倒くさい。
放っておこうと思い直して、
俺はコップを傾けた。
ヨシノ
「うわ、飲んでるよ」
スカ太郎
「当り前です、飲むために
コップに入れたんですから。」