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本編
職を失い、
モエちゃんにも逃げられ、
ご近所では嫌われ、
家まで失いそうなのに、
退職金も慰謝料などで
消えてしまったモラオ…。
私だけは離すまいと思ったのか、
なかなか離婚届に判を押そうと
しなかった。
私は調停や裁判も覚悟したが、
義両親が何度も説得をしてくれた
お陰で、どうにか裁判所の助けを
借りる事なく離婚が成立した。
だがモラオは、「その代わり…。」
と、ユウの養育費を私に払って欲しい
と言い出した。
確かに、私は過去に何度か、ユウと
養子縁組をしたいと申し出ていた。
だが、モラオがあれこれ理由を
つけては先延ばしにし、結局、
養子縁組は出来ていなかったのだ。
今思えば、養子縁組をする際、
もし私に戸籍を見られてしまうと、
前の奥さんと死別ではない事が
バレてしまうので、それを
恐れていたからなのだろうが、
お陰で私には、ユウに対する
扶養義務は無く、養育費を払わなくて
済んだので、結果オーライだった。
ユウのことは、義両親が
「このままモラオが育てたら、
ロクな大人にならない!」と言って、
引き取ることになり、
今は義実家から学校に通っている。
私は内心ホッとした。
無関係になっても、一時は
本当の我が子と思って育てた子だ。
今後関わることは無くても、
真っ当に育って欲しいし、
幸せになって欲しいと願っている。
義両親は良識のある人達だから、
血の繋がった孫を、愛情を持って
厳しく育て直してくれるはずだ。
実の母親とも、そのうち
会えるのではないだろうか…。
ただ、経済的な理由と、
義両親の教育方針で、
ユウが目指していた中学受験は、
なくなってしまったらしい。
モラオに似て無駄にプライドが高い
ユウは、今まで何かにつけて、
「僕は中学受験をするんだ!クラスの
みんなとは違うんだ!」と周りの
友達を見下してきたらしいのだが…