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【第9話】天才の姉だけ溺愛する両親→発達障害の私は犬小屋に放置され…
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本編
彼に引っ張られるようにして、
私はその方向へ歩いて行った。
昨日の夜も、通りがかった気がする。
立派なビルの中に誘われた。
怖かったけれど、男の人の
優しい目を見ていたら、
何となく「大丈夫」という気がした。
コワモテ「おい、メシだ。
握り飯よこせ!」
その人は、ビルの中の部屋に入った
瞬間、怒鳴るように言った。
はいという返事がして、リビング
らしい大きな部屋が騒がしくなった。
コワモテ「とにかく入れ。
まずは飯と水だ」
スカミ「ありがとう、ございます」
おっかなびっくりついて行く。
リビングの中央にあるテーブル上
には、大皿におにぎりが
積み上げられていた。
温かい、お味噌汁の匂いもする。
コワモテ「まあ食え、話はその後な」
スカミ「はい」
おにぎり。見た事はあるけれど、
食べるのは初めてだ。
私は、口いっぱいに
美味しいお米を頬ばった。
頬張りながら、涙を流した。
コワモテ「訳アリだな?
やけにビビってるし、さっきなんか、
母ちゃんに言わないでとか
叫んでたし。それに…
あり得ねえ痩せ方だ」
男性「コワモテの兄貴。
この子、もしかして」
コワモテ「ああ、
たぶんそういう事だろう」
男の人達が何か話し合っているのが
聞こえた。
でも、私は食べる事に集中した。
今度はいつ、こんな美味しいものを
食べられるか、見当もつかないから。