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本編

ガッシャーンという、

派手な物音が背後で起きた。

驚く暇もなく、今度は夫の

 

カネト「坊や!それを離して、

おじさんに渡して!」

 

とても焦った声も聞こえた。

振り返った私が見たのは、

一瞬でめまいが起きるような

光景だった。

なんて事してくれてるの!?

大慌ての夫、面白がって

彼をからかうように

逃げ回る4歳児、

そして笑って見ている母親。

特に4歳男児が握りしめている

代物は、我が家の家宝と言っても

いいほどの高価な品だ。

もう、めちゃくちゃ!

 

何でこんな事になったのか、

順を追って話そう。

私はアスカ、34歳の

古美術商を営む主婦だ。

夫カネトとは

お見合い結婚だった。

というのも、私は実家が

代々古美術商で、一人娘のうえに

跡取り娘でもあったから。

ただでさえなかなか出会いが

無く、婿取りの条件をのんで

くれる男性のあてもなかった。

そこに、お見合い話が

持ち込まれた。

 

カネト「歴史が

好きなんですよ、僕」

 

紹介されたのちの夫、

カネトは物静かで、

いかにも学者肌な人物だった。

特に美術史が好きだと言う。