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本編
胸の鼓動が速くなっている。
ハンドルを握る夫の顔を見た瞬間、
張り詰めていたものがぷつりと切れた。
時は少しさかのぼる。
数日前、私は5年ぶりに
カオリと顔を合わせていた。
平日の昼間、人もまばらなカフェ。
窓の外には小さな公園が見えていて、
ベビーカーを押すママたちの
姿がちらほら。
カオリ『アスカさ〜ん、こっちこっち。』
手を振るカオリは、あの頃と
何も変わっていなかった。
少し派手なメイク、ブランドロゴの
大きなバッグ、そして“自分中心”の笑顔。
アスカ「カオリさん、
本当にお久しぶりですね。」
私はアスカ、32歳の専業主婦。
娘のリカは小学生になり、
子育ては少し落ち着いて
きたところだった。
正直、会いたくて来たわけじゃない。
家が比較的近いこともあって、
ここで露骨に関係を切るのも
面倒で……「仕方なく」
この席に座っている。

