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本編
クミコ「いいの。
私にとってのシオン先輩は、
彼氏候補とかじゃなくて。
推しなの、推し!」
もう何回も繰り返し聞かれている質問に、
私は力を込めて反論する。
推しという、とても便利な言葉を使いながら。
シオン先輩とは、長年通っている空手道場で知り合った。
忘れもしない、少学1年生の春の話よ。
私の父は、まぁいろいろあって、
護身に対してとても熱心だ。
近所の少年少女を対象に、
かつて空手をやっていたという男性が、
個人的に開いている「道場」へ、
私も通うよう言われた。
最初は気乗りしなかったのだけど、行ってみたら、シオン先輩がいた。
クミコ「かっこいいっ!」
私より1学年上のシオン先輩。
それはそれは美しい少年だった。
さらっさらの栗毛、長いまつげに色白、切れ長な目。
どこをとっても、私には完ぺきな美少年に見えた。
いや、今も美青年なんだけど。
シオン「君も空手やるの?
がんばろうね」
先輩は優しく微笑んで、
私の入門を受け入れてくれた。