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本編

それはそれは、猛烈な

叫びっぷりだったっけ。

あの時の悲痛なシャウトを浴びて、

俺は一念発起し、今も警備会社で

頑張れているわけだが。

 

でもやっぱり、悪い印象は

ぬぐえていないだろう。

未だに顔を合わせづらい。

いつも睨まれるので。

 

そういう事情もあり、

俺は誰にも頼れない。少なくとも

俺自身はそう思っていた。

同僚に励まされ、

何とか気分は持ち直したものの、

孤立が分かり切っている自宅に

帰るのは、やっぱりつらい。

 

午後11時半、重たい足を

引きずりながら、俺は自分の城で

あるはずの自宅玄関に入った。

 

スカオ「ただいま」

 

返事はない。人の気配するから、

妻も娘も家にいるのは間違いない。

 

かつての記憶がよみがえる。

新婚時代からずっと、そうだ、

半年前までなら、二人とも

笑顔で玄関まで来てくれていた。

 

カツミ「お帰りなさい、お疲れ様」

 

アヤ「お父さん!お帰りー!

あのね、今日ね学校で」

 

カツミ「待ちなさい、お父さんは

まだ玄関にいるじゃないの」

 

笑顔があふれていたっけ。

今は、誰も姿を見せないし、

声も聞こえない。

 

そっとリビングへ入ると、カツミが

ソファで何やら忙しげだった。

遠めに見る限り、スマホを

操作しているようだ。

 

俺に気づいたらしい。とたんに、

きっと眉が吊り上がった。